#iPhone Duoはヒンジで冷やす。折りたたみの熱問題を解決する仕組み

ヒンジといえば、折るための部品だった。iPhone Duoでは、どうやら冷やす仕事まで任されている。
Appleはヒンジ内部に柔軟なグラファイト製パイプを通し、左右の筐体へ熱を逃がす仕組みを採用。折りたたみiPhoneならではの冷却設計を見ていく。

出典元:photo by 9to5mac

ヒンジといえば、折るための部品だった。iPhone Duoでは、どうやら冷やす仕事まで任されている。
Appleはヒンジ内部に柔軟なグラファイト製パイプを通し、左右の筐体へ熱を逃がす仕組みを採用。折りたたみiPhoneならではの冷却設計を見ていく。

目次

iPhone Duoの冷却で最大の特徴は、ヒンジ内部に柔軟なグラファイト製パイプを通していることである。
これにより、A20 Proなどから発生した熱を左右の筐体へ移動させ、放熱に使える表面積を広げている。
Appleによると、この部分は何度も折りたたんでも熱伝導性と構造強度を維持する必要があり、熱設計チームと機構設計チームが共同で開発したという。

さらに、
⚫︎ A20 Proとベイパーチャンバーの間に新素材「metal over foam」
⚫︎ Duo版A20 Proには第2ディスプレイエンジン
⚫︎ 内側ディスプレイの画面下カメラにも対応

と、Duo専用の設計がかなり入っている。

折るためのヒンジを、熱の通り道にも使う。
なかなかAppleらしい力技である。

この記事のポイント

対象製品:iPhone Duo
情報の確度:一次情報・実機情報
公式発表:あり
主な出典:Apple関係者へのPCMagインタビュー、9to5Mac
確認日:2026年10月16日
読者に関係すること:iPhone Duoの発熱対策、ヒンジ構造、A20 Pro、ベイパーチャンバーの仕組みが分かる

iPhone Duoはなぜ熱対策が難しい?

折りたたみスマホには、普通のiPhoneとは違う熱設計の難しさがある。
iPhone Duoは閉じると本体が重なり、厚みがほぼ倍になる。
つまり、内部で発生した熱を外へ逃がす条件が、通常の1枚板型iPhoneとは違う。 

しかもDuoにはA20 Proが搭載され、内側と外側の2つのディスプレイも動かす。
性能を上げれば熱も出る。だが、折りたたみ構造だから冷却スペースを好きなだけ増やすわけにもいかない。

薄さ、強度、ヒンジ、バッテリー、ディスプレイ。
全部を同じ箱へ押し込む必要がある。
折りたたみiPhoneは、曲がるだけでも十分大変なのに、熱まで面倒なのである。

ヒンジ内部に柔軟なグラファイト製パイプ

そこでAppleが使ったのが、ヒンジを熱の通り道にする方法だった。
Appleの熱設計担当者によると、iPhone Duoでは柔軟なグラファイト素材をヒンジ内部へ通し、左右の筐体間で熱を移動させている。 
これによって片側だけに熱が集中するのを防ぎ、両方の筐体を使って放熱できる。

考え方としてはシンプルだ。
片方が熱ければ、もう片方にも仕事をしてもらう。
しかし、実際に作るとなると難しい。

ヒンジ部分の素材は、何千回、何万回と開閉されても、
⚫︎ 曲がる
⚫︎ 切れない
⚫︎ 熱を伝え続ける
⚫︎ 構造的にも壊れない

という条件を満たさなければならない。

Appleはこの部分を、熱設計チームと機構設計チームが共同で開発したとしている。 
ヒンジは、ただ曲がればいい部品ではなくなった。

左右の筐体で熱を逃がす仕組み

このグラファイトパイプの狙いは、放熱に使える面積を増やすことである。
スマートフォンの冷却では、最終的に内部の熱を筐体へ広げ、外気へ逃がす必要がある。

普通のiPhoneなら1枚の筐体全体を使える。
しかしDuoでは構造が左右に分かれる。
そこでヒンジをまたいで熱を移動できれば、左右両方をひとつの大きな放熱面として使える。

つまりAppleは、折りたたみだから冷えにくい を、折りたたみだから両側へ熱を逃がせる に少しひっくり返したわけだ。 
欠点だった構造を、冷却にも利用する。
このあたりはかなり面白い。

A20 Proとベイパーチャンバーをつなぐ新素材

iPhone Duoの冷却は、ヒンジだけではない。
AppleはA20 Proとベイパーチャンバーの間にも、「metal over foam」と呼ぶ新しい素材を採用している。

役割は、A20 Proから出た熱をベイパーチャンバーへ効率よく伝えること。
ただし、単に金属でつなげばいいわけではない。
スマートフォン内部では、部品のわずかな動きや圧力にも対応する必要がある。
この素材は熱を伝えながら、機械的な柔軟性も持たせているという。Appleは、必要な特性を実現するまで数カ月開発したとしている。

高性能チップ。
ベイパーチャンバー。
その間をつなぐ素材。
冷却というのは、ひとつ大きな部品を入れれば終わる話ではないらしい。

Duo専用A20 Proには第2ディスプレイエンジン

iPhone Duoには、iPhone 18 Proや18 Pro Maxと同じA20 Proが搭載されている。
ただし、Duo向けは少し仕様が違う。

Appleによると、内側と外側のディスプレイを同時に動かすため、第2ディスプレイエンジンを追加している。 
さらに内側ディスプレイでは、FaceTimeカメラを画面の下へ配置するためのサポートも追加された。
つまりA20 Proは単純に「同じチップをそのまま載せた」のではない。

Duo用に、
⚫︎ 2画面同時駆動
⚫︎ 画面下カメラ
⚫︎ 折りたたみ特有の熱設計

まで考えた専用仕様になっている。
折りたたみiPhoneは、外側だけ変えれば作れるものではなかったのである。

折りたたみなのに、熱を逃がせる理由

iPhone Duoの冷却をまとめると、熱の流れはかなり立体的だ。

まずA20 Proで発生した熱を「metal over foam」でベイパーチャンバーへ伝える。
そこで熱を広げる。

さらにヒンジ内部の柔軟なグラファイトパイプを使って、左右の筐体へ熱を分散する。
つまり、チップ → 新素材 → ベイパーチャンバー → ヒンジ → 左右の筐体 という複数段階の冷却設計になっている。

iPhone Duoの価格を見ると、どうしても「折りたためるから高い」と思ってしまう。
だが内部を見ると、折りたためるようにするためだけではなく、折りたたんでも普通に高性能で使えるようにするための技術にもかなり手間がかかっている。
ヒンジひとつ取っても、曲げるだけでは済まないのである。

まとめ

iPhone Duoの冷却には、折りたたみ構造ならではの工夫が詰まっている。

ポイントは、
⚫︎ ヒンジ内部に柔軟なグラファイト製パイプ
⚫︎ 左右の筐体へ熱を分散
⚫︎ A20 Proとベイパーチャンバーを新素材で接続
⚫︎ Duo版A20 Proには第2ディスプレイエンジン
⚫︎ 画面下カメラにも対応

というものだ。

ヒンジといえば、折るための部品だった。
iPhone Duoでは、そこに冷却まで任せた。
折りたたむ場所を、熱の逃げ道にする。

制約が増えるほど、設計は妙に賢くなるものである。

出典

PCMag(Appleシリコン・熱設計担当者へのインタビュー)

更新履歴

2026年10月16日:初回公開